私の母親は84歳になるが、親が健在という事は
子供にとって最高に幸せな事である。
以前までは、毎週週末に良く岩手の母親に電話をしていたが、
最近は忙しさを理由に月に二回ぐらいになった。
そのうち一回でも忘れると母親から電話をしてくる。
「電話がないが変わりはないか」と。
岩手の故郷を出てから38年近くになるが、母親の言う事は
38年間変わらない。「元気に働けよ」「健康で気をつけろ」
「ちゃんとご飯食べてるか」「人に迷惑かけるなよ」
が口癖である。今も変わらない。
子を思う母親の変わらぬ想いなのであろう。
未だ若かった頃は、私にも親の気持ちをわかっていたつもりであった
が、それはつもりであって本当はわかっていなかったと今は思う。
自分の子供が一人前に成長した今、
自分を育ててくれた親の気持ちが痛いほどわかるようになった。
よく「子を持って親の気持ちがわかる」と言うが、私は
「子供を育て上げて親の気持ちが良く分かる」のだと
思うのである。子供を育てている時は、可愛らしさと
一生懸命と、子育ての苦労で自分を育ててくれた親の気持ちまで
分かる余裕がない。子育てを終え自分の人生を「ふっと」と
振り返った時、親は自分が子育てをしたような、可愛らしさと、
一生懸命さと、苦労をしたんだな、と思うのです。
「親思う 心にまさる親心 今日のおとずれ
なんときくらん」松蔭。
最近、子供の虐待や親子の殺人事件が多い。また、少年が大人を
脅したり殺したりする事件も後を絶たないが、これらの事件の
背景には、親子の絆が薄れてきた事や、大人と子供の関係が
崩れてきた事も原因の一つである。
子を思う親心と親を思う子供心を 互いに通じさせたいものである。