【#890】 形と中味

聖心女子大学名誉教授で天理教谿郷分教会長の松本滋先生の
エッセー集「成人の心」より、一節をご紹介します。
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形と中味

よく、形や格好などどうでもいい、中味あるいは心さえ
しっかりしていれば、という人がいます。
確かにそれも一理あります。
どんなに形を整え、格好を良く見せても、心がこもって
いなければ実に空疎なものです。
我が国における過剰包装など、その良い例と言えましょう。

しかしまた、形に見える姿が、中味のあり様を表わしている
場合もあります。
人の示す行儀作法、態度物腰、あるいは着物の着方一つから
でも、その人の心のあり方を、ある程度うかがうことが
できるものです。

更に言うならば、形の面から中味、心に働きかけるという
ことも可能なのです。
心を磨き、中味を充実させるということが真の目的であっても、
形や格好の面から、キチッと決めてゆくことが必要な場合も
よくあります。

様々な芸道における修行はそれをよく物語っていますが、
日常的な生活においても、あまりにもだらしない、節度・礼儀に
欠けた行為や、社会的なエチケットに反する生き方をしていては、
中味の充実など、とても考えられないでありましょう。

形は心の表現であると同時に、心をつくり、方向づける力をも
持つと思うのです。