【#1357】 人材と人財

急激な景気後退で経済界も政界も混乱の様相を呈している。確かに我々
も景気の後退の気配を強く感じる。アメリカのサブプライムローン問題
に端を発したこの度の経済危機・金融危機は、今までに経験した事のな
い事態といえるかもしれない。株安と円高という特に海外生産や輸出依
存の高い大企業にとってダメージは大きいようである。

その大企業は派遣社員の解雇が連日のようにマスコミで報じられてい
る。工場閉鎖や操業短縮・停止で特に雇用調整弁としての非正規社員が
解雇されるという事が多発している。非正規社員だけではない、正規社
員や来年度入社予定の新卒者の内定取り消しも出ているのだから、事は
非常に深刻であるといえる。1991年のバブル崩壊のときは時間をかけて
の雇用調整であったが、今回は急激に一斉に起きているのが特徴的とい
える。

解雇される非正規社員も大変である。内定取り消しされる学生も大変で
ある事は重々わかるが、企業も生き残りをかけたギリギリの選択ではあ
ると思うが、しかし年末を控えたこの時期の解雇は胸の痛くなる話しで
ある。

確かに日本は資本主義体制であるから、市場経済の影響で雇用調整する
ことは企業として当然の策であるといえる。しかし今回は余りにも短期
間での対策ではないかと思うのである。夏前まではどの企業も業績が順
調で順風満帆の景気の良い話が多かった。ところが秋風と共に一気に不
景気風である。一企業では避けられない事も多くあるが、しかし大企業
は常にどのような景気変動にも耐えられる経営基盤を作っておくのが経
営者の責任であり、企業としての社会的責任といえる。景気のよいとき
にはどんどん非正規社員でフル操業し稼ぎ、少し状況が悪くなると解
雇・リストラというのは大企業の身勝手という側面もある。

先般銀行に行ったら「今はあまり人を増やさないほうが良いですよ。逆
に社員を少なくして売り上げを現状維持でやるようにしたらいいです
よ」などと言われたが、「なんでも人減らしは大企業であって、中小企
業は人を減らしたら、景気が上向いたとき人材の確保が出来なくなるの
で、現有の社員と共にこの波を乗り切りますよ」と言って帰ってきた。

大企業は人減らしも人の採用も簡単に出来るが、中小企業はそうはいか
ない。だからこんな状況のときは社員と共に積極果敢に進まなければな
らないと思っている。大企業は人は人材だが中小企業は人は人財なんだ
な。